株式会社ツクノに営業インタビューしてきた
今回は株式会社ツクノの代表取締役 成田大輔さんに同社の営業手法についてインタビューさせていただきました。WEBでここまで開示していいのかというほどの濃い内容です。中小製造業の方は必見です。
会社概要
会社名 | 株式会社ツクノ |
設立 | 1939年12月 |
所在地 | 〒257-0031 神奈川県秦野市曽屋989-6 |
WEB | http://www.tsukuno.co.jp/ |
従業員数 | 30名 |
営業社員数 | 4名 |
事業内容 | 電気機械器具製作 一般産業用機器、装置及び各種盤の設計製作 昇降機(エレベータ)関連機器製作 車両用関連機器製作 半導体製造装置関連機器製作 航空機関連製品製作 スプレードライヤー関連機器製作 |
株式会社ツクノの事業内容
弊社は創業から70年以上の歴史とともに培ってきた金属加工技術と組立技術をお客様へご提供させていただき、時代の流れと共に多くの分野の製品に関わってきています。
金属部品などの加工から板金、塗装、溶接、さらには組立までを請け負うことが可能で、お客様からの一括発注を得意としております。
製造業における営業とは
製造業の営業文化
多くの製造業においては「会社が抱える取引先からの継続受注、さらには受注拡大」が経営のテーマだと思います。
これには製造業独自の特殊なバックグラウンドが影響していると私は捉えています。
たとえば、製造業界のある会社が「〇〇という製品を作りたい」と考えたとしましょう。
〇〇を作る時に自社ではある部品の制作ができないとなると、協力会社を探さなければなりません。この協力会社探しが困難なのです。
WEBが発展してきたからといって、WEBに力を入れている中小製造業はまだまだ少なく、過去の繋がりや関係先から協力会社を探すしかありません。
このように協力会社を探すことの難しさが製造業に営業文化を根付かせない最大の理由とも言えます。
えっ、でも頑張って新たな協力会社を探して来たら、安く済むかもしれないじゃん、協力会社を探す努力を怠っているのでは?と思われる方がいらっしゃるでしょう。
それはその通りなのですが、やはりお客様は今、お願いしている協力会社(中小製造業)に依頼するしかないのが実情です。というのも他の協力会社を探したり、それこそ製作を依頼すると納期リスクや製造品質リスクが伴ってくるので、発注先(協力会社)を変更することに躊躇するからです。
モノづくりゆえに、発注してからでないと協力会社のQCD(※)が自社の求めるレベルにあるかどうか分からないという点が協力会社の固定化を生んでいるのです。
※QCD=Quality(品質)・Cost(価格)・Delivery(納期)の略称
製造業における新規開拓
上述の理由から、顧客を新たに開拓する、いわゆる新規開拓を行っている中小製造業は少ない状況です。
弊社も以前までは新規開拓は取り組んでいませんでした。
少し話が逸れますが、私はツクノ入社前に大手半導体メーカーに勤めており、そこで営業経験を積みました。ツクノに入社してからは、メーカー勤務時代に学んだ営業経験・ノウハウを活かして、新たな取引先の開拓を始めました。
これまで取り組んだことのない営業活動(新規開拓)に対して、社内からは多少なりとも反発はありました(苦笑)
ところが実際に新規開拓をしてみると、門前払い・・・ということはほとんどなく、少なくとも話は聞いてもらうことが出来るのです。
そして中にはニーズとタイミングがちょうど合う顧客もいて、即取引という成功体験を生むことができました。
私はある程度の確信を持って、新規開拓に取り組みましたが、この成功体験を早い段階で積めたことが大きかったと思います。社員が「あっ、営業活動ってこうやるんだ」「新規開拓は世間で言われているほど難しくないじゃん」と認識し始めたからです。
このような経緯もあり、今となっては社員約30名という弊社であっても私を含む5名の営業チームを形成するようになり、おかげさまで毎年取引先は増加しています。
製造業における新規開拓のコツ・極意
繰り返しますが、製造業において営業活動は自社にとっても顧客にとっても重要です。
その理由が次の通りです。
まず、こちら(製造業の営業文化リンク)で述べた内容について違う表現をすると
他の製造業が営業活動をしていない
ということは
顧客側では新たな情報が不足している
ともいえるはずです。
つまり、営業活動をすることは顧客のタメでもあるのです。
弊社で言えば、「金属加工や組立の相場は近年こうなってきています」とか、今の加工方法を伺って「もっとこのような加工に変えればコストを抑えられます」と情報提供を行うことは顧客にとっては利益と言えるでしょう。
営業活動と表現するから難しく聴こえるだけで、情報提供活動と言い換えれば何ら難しいことはないはずです。
提案営業やソリューション営業が出来るならば実践すべきでしょうが、それこそ中小製造業にとってはハードルが高い。そもそも顧客のことをよく知っていなきゃ提案は出来ません。
なので、まずは一にも二にも会うこと。そして最新情報を伝える、ついでにお困りごとがないかを尋ねると言うスタンスが大切ではないかと思います。
改めて文字にすると営業らしいことはしていませんね(笑)
新規顧客に10件回って10件取れるなんてことは流石にありませんが、4件に1件はお困りごとを抱えていますね。
近年、個人商店のような製造業が廃業(※)していることも起因しているのでしょう。「これまでお願いしていた協力会社がもう廃業する(もしくはやらない)と言い出して困っている」という話が意外と多くあります。
※小規模製造業は事業承継が出来ず、黒字のうちに会社をたたんでしまう経営者が多くなってきている。
こういったお客様は純粋に困っているから、厳しい値引き交渉もありませんので、弊社にとっても有難い話になるのです。
ツクノの強みと製造業の目指すべき姿
先ほども述べましたが顧客が我々のような製造会社に求めているのは一定以上のQCDです。むしろQ(Quality=製品品質)が高いことは前提条件で、C(価格)とD(納期や回答・対応スピード)が勝負を分けます。
弊社はデリバリーで勝負しています。
製品の納期を守ることは当然のことながら、顧客担当者からの質問や要望に対しての回答スピード、見積照会を得てからの提出スピードなどあらゆる顧客への対応品質を磨いています。
これは営業部隊を作って、顧客対応を鍛えているので実践できることでもあります。
日々、営業マンが顧客と関係を構築しているからこそ「ツクノは対応スピードが速いから」という理由で依頼がくるわけです。
対応スピードを上げるために、弊社の場合は意思疎通を早く取るようにしています。
チャットツールや顧客管理ツール(SFA/CRM)といったIT活用も当然のことながら、営業社員がいち早く決断できるよう私に意見を求めやすいよう接し、求めてきた際には即断即決できるようにしています。
これは中堅、大企業には出来ないことです。
私が入社してから営業部隊を作り始めたと先ほど申し上げました通り、営業社員の採用はそれから始めました。(採用し始めて7年ほど)
そのため年齢が若い社員が多く、素直でITに強い。これは紛れもない弊社の資産です。
弊社が築いた営業組織は他の中小製造業でもきっと構築できるはずです。
難しいことなんて1つもありません。
まずは社長がターゲット顧客に出向いて御用聞きすることから始めればいいのです。
製造業の多くはどうしても守備的というか「受け」になっています。その意識を積極的、「攻め」に転じることで抱える技術力が活きてくると私は考えます。
具体的な新規開拓手法
おかげさまで今は受注で製造が溢れているのでいったんストップしておりますが、営業代行会社にアポを取ってもらって、そこに訪問活動をすることを以前まではしていて、近々再開予定です。
ターゲットは県下の売上100億未満の企業です。
大企業の方が量産も開発数も多くあるのですが、取引開始に時間がかかってしまいます。なのでPush営業のターゲットとしては中堅クラスを狙っています。
訪問する際に何か特別なことをしているわけではありません。
自作のパンフレットと製造実績を持って、お困りごとを尋ねているだけですね。
既存取引先の受注拡大
既存の取引先が大手企業の場合はたいてい1部署、もっというと1人の設計担当者さんからの注文しか取れていない場合があります。
実際、私が入社した当時は発注してくれているお客様でさえ、私が訪問した際には「ツクノさんって・・・・何か取引してましたっけ?」という状況でした。
先方の担当者自身も弊社のことを十分に認識していなかったのです。
なので、現在はお客様の社内組織図を作成し、設計担当者さんの名前をズラっと並べて、いつ訪問したのか、社長(私)は同行して挨拶したことがあるのかと日付と〇×をつけています。
既に述べた通り、弊社の営業では難しいことを必要としません。「弊社の社長がご挨拶に伺いたいと申しておりまして・・・・」とお願いするだけです。
こうすることで訪問頻度を高め、「何か困ったときにはとりあえずツクノに相談しよう!」と思ってもらうようなシカケを行っています。
同じことを同一顧客の他部署にも展開するようにしています。
他部署へのパイプ作りのために営業マンには異動情報や新プロジェクトには聞き耳を立てるよう指導してますね。
ツクノの今後の営業課題
新規顧客に訪問し、タイミングがバッチリで具体的な取引になれば最高なのですが、必ずそうなるわけではありません。
具体的なお困りごとを抱えていない顧客に対して
「ツクノってなんか信用できそうだから、何か困ったときには尋ねてみよう」
と思ってもらうためのフォロー体制を構築していくことが今後の課題です。
成田社長、ありがとうございました!
株式会社ツクノについて詳しくはは下記ホームページをご覧ください。