営業力を高める~チーム営業力、営業組織力を高める編~

前々回の「営業力ってそもそも何?」につづいて
前回は「営業パーソン個々の営業力アップ」について書きました。

今回は組織的に営業力を高める方法がテーマです。

営業組織力、チーム営業力を高める上でのキーマン

最初に言っておくと、組織的な営業力を高めようとした時、営業パーソン(平の営業社員)はほぼ無力です。

キーマンとなるのは営業マネージャー、中小企業ならば社長です。

なぜか!?

営業組織力はシクミによって高めるからです。

ここでいうシクミとは・・・

・営業パーソンの能力に頼らずとも販売機会を増やす、受注率を高めることができる営業ツールの作成と改善を行う体制作り
・営業社員の配置転換など人事面に関する制度
・営業社員の適性を見抜いて営業スキル別のスペシャリストを作る環境
・取引先、見込客に対して最適な人材を配置するためのデータ
全部門横断的な組織営業を実現するための情報共有網
営業パーソンを指導、育成するためのプログラム

など制度やルールを構築することのこと私はシクミと言っています。

シクミは裁量と責任を背負える人でないと、難しいことからマネージャーや社長じゃないとシクミ作りは不可=営業組織力を高めることは出来ないと考えてます。

そもそも営業組織力って何?

営業組織力という言葉は一般的ではないでしょう。
私が好んで使っているだけですので^^;

営業組織力について私はこのように定義してます。

上図の水準を高めるには営業組織力(シクミ作りやルール、戦術策定など)を上げていくことが必要です。

営業という職種は教育や実戦により学習し、経験を積み、能力を伸ばしていくことができます。
ですが、能力の伸長率は営業パーソンの資質に依存するため、

営業組織力がない=シクミがない場合は、上図のように高い成果をあげられる営業パーソン、そうでない営業パーソンに分かれていきます

図は極端な例ですが、図Aと図Bを比較してみると営業組織力が高い企業であれば営業成果、営業力の水準が自ずと高くなります。

つまり、

企業の営業力というのは、営業組織力のことである

と言っても過言ではないということです。

営業パーソンの営業力は個人の成長力に依存しますが、営業組織力は意図して高めることができるのです。

営業組織力の強化ポイント

前置きが長くなりましたが、ここからが本題。
営業組織力を高めるためのポイントは上でもチラッと紹介しましたが・・・
・営業パーソンの能力に頼らずとも販売機会を増やす、受注率を高めることができる営業ツールの作成と改善を行う体制作り(営業ツール以下を太字)
・営業社員の配置転換など人事面に関する制度(制度を太字)
・営業社員の適性を見抜いて営業スキル別のスペシャリストを作る環境(営業スペ~環境を太字)
・取引先、見込客に対して最適な人材を配置するためのデータ(データを太字)
・全部門横断的な組織営業を実現するための情報共有網(全社横断的~営業、情報共有網を太字)
・営業パーソンを指導、育成するためのプログラム(指導~構築を太字)
などなどいくつにも渡ります。

これらを大きく分類するとこんな感じです。

では1つずつ解説していきます。

「ツールで営業組織力を高める」

まずツールです。

ツールとは営業ツールのことを指します。
そもそも営業ツールとは?という人がいらっしゃるかと思いますので、改めて説明します。

営業ツールとは(あくまでの私の中の定義です)

営業パーソンが顧客に提出するあらゆる資料
営業パーソンの商談活動を円滑にする道具

のことです。

顧客に提出する資料というと・・・

会社パンフレット
サービスや商品のカタログ、説明資料
価格表
見積書
提案書
事例 など

営業パーソンが商談に持ち歩く、紙やデータで顧客に提示するツールのことを意味しています。

商談活動を円滑にする道具とは何かというと・・・

アポをとるためのテレアポスクリプト
商談時にトークマニュアル
あらゆるシーンを想定したメールテンプレート文 など

営業パーソンがその道具を使えば(読んで体現できるようになれば)、商談において一定以上の成果をあげることが期待できるツールのことを意味しています。

↑メールテンプレート例

たいていの営業組織において、営業ツールを改善する頻度が極端に少なかったり、そもそも用意されていないケースが多くみられます。

また、営業パーソンが個々で独自のツールを運用・改善していて、ツールを自分のノウハウとして貯め込んでいるケースも多くあります。このノウハウを貯め込むというのは、いわゆる個人商店型営業と言われる日本の営業組織の悪習ですね。

営業ツールとは商談においてどんな営業パーソンであっても一定以上の成果を上げるための道具です。

次の文を読みながらイメージしてみてください。

アポが取りやすいスクリプトを使えば、当然アポ率が上がって、
次回の面談に繋げるためのトーク集を使ったり、魅力的なカタログを使えば、当然、面談進展率が上がって、
顧客の琴線に触れやすい提案書テンプレートを使えば、内示をもらいやすくなり、
顧客が上申しやすい見積書の提示方法が分かっていれば、受注率が上がります。

営業ツールを整えるだけで受注数が増える気しませんか?

少しだけ増える気がした人もいれば、かなり増えそうな気がした人もいることでしょう。
いずれにせよ営業ツールの共有と改善を行えば、少なからず営業成果は良くなるのです。

しかしどの会社も行っていません。

なぜかというと、超面倒だから、です。

営業ツールを共有・改善するためのステップを次に書いていきます。

STEP1.営業フェーズ毎で必要となる営業ツールを書き出す
STEP2.営業ツールの改善担当者を決める
STEP3.定期的にツール改善ミーティングを行う
STEP4.改善したツールを全営業社員に配布、共有する
STEP5.全営業社員が実際の営業活動で利用する
STEP6.改善Before-Afterを測定する
STEP7.全営業社員からツール改善担当員が現場の声を吸い上げる
→STEP3に戻る

営業ツールを改善しようとすると、これほどのプロセスがあります。

そしてえてしてマネージャー、中小企業であれば社長が、営業社員に対して「●●君を商品カタログ改善担当に任命するから宜しく!」と丸投げします。これが日本の中小企業の実態であり、ダメなところです。

考えてみてください。任命された営業社員が

普段の営業活動だけで、こんなにも忙しいのにふざけんなよ!!(激おこ)

という反応を示すのは当然のことではないでしょうか。

営業ツールの改善には必ずマネージャー(社長)も携わり、マネージャー自身が1ツールは改善するようにしなければ示しがつきません

リーダーが率先してツールを改善するようにしましょう。そうすれば・・・

マネージャーも忙しい中、改善に取り組んでいるんだ。しょうがない、俺も頑張ろう。

このような意識を醸成することこそが、営業組織力を高めるための第一歩です。

「人材適性を見抜いて営業組織力を高める」

では続いて人材適性についてです。

人には得意・不得意があります。
これは営業という仕事においても同様です。

初めて会った人と心的距離を縮めることが得意である
大人数でも緊張せず、堂々とプレゼンができる
電話で相手の感情や心の動きを掴むことができる など

営業パーソンには誰にでも営業プロセスや商談フェーズに応じて得意な工程があることでしょう。

営業マネージャーや中小企業の社長の重要な仕事の1つは、営業パーソンの得意分野をしっかり見極めることです。

そして得意分野を徹底的・集中的に伸ばすことです。

自分(営業マネージャーや社長)の営業スタイルや成功体験を営業パーソンに押し付けず、彼ら彼女たちの適性に応じた指導を行うわなければなりません。

その理由を説明するために例をあげましょう。

上でツールの重要性について書きましたが、提案書や製品紹介資料をパワーポイントで作ることは人によって得意・不得意が分かれるところです。

たとえば、商談成果をあまりあげられない営業のAさんがいたとします。
商談はイマイチだが、資料作成はピカイチ。

Aさんの場合、他の営業社員と同様に
商談数を増やしてくること
商談品質を高めて売上に繋げること
を命じても、大きな成果はあがらないかもしれません。

であれば、Aさんには他の営業社員が抱える商談の提案書作成をサポートさせたり、商談に必要なサービス紹介資料を作ってもらうことを重点的に行ってもらった方が営業チーム全体として高い成果を望めるのではないでしょうか。

製造部門においては研究・開発・製造・生産と細かく専門パートを分類していることが当たり前です。
ところが中小企業の営業部門においては、新規顧客を開拓するためのテレアポから商談、提出する資料の作成、さらには既存顧客のフォローまで、顧客対応の全てを1人の営業パーソンが担当することが当たり前になっています。

最近になってようやく、大企業やベンチャー企業においてインサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサポート(カスタマーサクセス)という営業というか、顧客対応業務の細分化が行われてくるようになりました。

営業パーソンをゼネラリストに育てようとすることは決して悪いことではありません。
ただ営業組織としての成果(営業チーム全体の売上)を考えた時、ゼネラリストよりスペシャリストを育てた方が効率がいいと私は考えます。

専門性が高くなれば、ツールの作成効率だけでなく品質もグッと上がることでしょう。

適性を見抜くためにやるべきことは・・・

STEP1.全ての営業業務を書き出す
STEP2.業務品質の高低を見極めるための基準を設ける
STEP3.基準をもとに営業パーソンの適性を見抜く

これだけです。これだけ、と言ってもSTEP1とSTEP2が結構大変です^^;
が、2~3日あれば終わるボリュームです。
また、人事評価制度と結びつけるようにすると難易度はグンっと上がりますが、営業チームの目標達成度を評価対象に据えれば難しくないはずです。

以上より営業マネージャーや社長は営業パーソン個々の適性を見抜くことが必要となり、次の組織編制・組織統制の話に繋がっていきます。

「組織編制・組織統制により営業組織力を高める」

適性を見抜いたら、適切なポジションに営業パーソンを配置するべきです。
しかし今の社内(組織)にはポジションや部署がない・・・・ということがあり得ると思います。

なので、必要に応じて組織編制しなければなりません。

もっと言うと、抱える人材に合わせて柔軟に組織編制しなければ営業組織力を効率的に高めていくことが出来ない、ということです。

新規開拓は苦手だが、既存顧客をきっちりフォローし、追加の発注を取ってくることに長けた営業パーソンがいる。けれども営業は新規開拓と既存顧客のケアを両方することがミッションである!

という会社があった場合、その営業パーソンの評価はきっと低いはずです。
けれどもその人の能力が低いわけではありません。

新規顧客の開拓が不得意で、既存顧客や取引先の対応が得意なだけです。

こういう場合、既存顧客の担当チームを作ればいいのです。
すると自ずと新規顧客開拓チームも作ることになります。

新規顧客開拓チームには新規開拓が得意な人を、
既存顧客担当チームには既存対応が得意な人を配置する

たったこれだけで新規顧客の開拓数は新規・既存の両方をカバーさせていた頃と比べてきっと増えるはずでしょう。
また既存顧客の満足度は高まるはずです。

このように

営業パーソン個々の適性を見抜き、長所を伸ばしてあげられるようサポートし、長所や強みを発揮できるポジションや居場所を作ってあげる

これを私は組織編制(ポジションやチーム作り)組織統制(社員みんなの長所や強みを発揮できるチームであること)と言っています。そしてこの2つこそ営業マネージャーの、中小企業であれば社長の仕事です。

「データ共有・データ活用できる営業組織を作る」

ここまでのツール改善、人材適性、組織編成・組織統制を実施するためのベースとなるのがデータです。

データがないといずれも実施できません。
データを社内で蓄積・共有・活用するシクミの必要性について、例を用いて説明してみましょう。

新規顧客開拓を担当する営業パーソンが4名いる営業チームを例にします。
この会社のデータ活用レベルを3つに分けてみました。

データ活用レベル:激低の場合

4名が何件訪問したかというデータすらありません。
ただ売上数字や受注件数は請求書発行システム(販売管理)から抽出できるので分かります。

Bさんが優秀である、ということのみが分かりますね。
A君、C君、Dさんは何が原因で商談をうまく進めることができていないのかさっぱり分かりません。

こういうデータしか持っていない企業で多く見受けるのが、「Bを見習って、AもCもDももっと訪問しなさい!!」という営業マネジメントです。

データ活用レベル:中の場合

ExcelやCRM(SFA)でデータ共有している会社にありがちなデータがコチラです。

営業プロセスをザックリ区切って数字を取ってるケースです。
初回面談数は一緒ということは営業パーソンとしてのマーケティング力は全員変わらないというのが分かります。

またC君とDさんには「進行中の商談が多い」ということも新たな発見です。

ここから浮かぶ仮説としてはC君とDさんは

ひょっとしてクロージングが苦手なのでは?

ということです。なので、仮説を検証するためにC君とDさんが抱える商談の中で最終局面を迎えているものをピックアップし、Bさんに同行してもらうといった作戦が立てられます。

データ活用レベル:高の場合

CRM(SFA)でデータの扱いに慣れてきた会社は、下図のようなデータを使ってマネジメントしています。

まずこの表について説明します。

レベル中の表に面談者の立場を挿入しました。
※この会社は法人営業。

トップとは社長や部門長のこと、ミドルは管理職、スタッフは担当者でいわゆる窓口と呼ばれる人のことを指しています。

また「初めての面談で受注が決まった商談数」も追加しました。

この2つの切り口を追加するだけで、次のようなこと(事実および課題)が見えてきます。
・トップ層に対してはA君、Dさんの成績が良い、優秀なBさんをも上回る
・Bさんは実はミドル層からの受注が多いことが分かる
とはいえトップ~スタッフまでまんべんなく受注しているオールマイティ型と言える
ミドル層からの受注が多いということは中堅、大企業との商談が得意?なのかもしれない
・C君とDさんは初回面談からの成約・受注率が低い
・C君は2回目以降の面談機会を作ることに長けている一方で、決着率が低く、決断(クロージング)を迫れていないことがわかる
・DさんもC君と同様の数値である。違いとしてトップ層に対してNG率0%、つまり商談失敗がないことが分かる

以上の課題よりこの営業組織の対策として
・A君は、ターゲット顧客を社長など「トップ層と接触しやすい企業規模」に定め営業活動を行う
・同じくDさんもトップ層アプローチを行う
・A君とDさんの営業活動の中でミドル、スタッフ層との商談が発生したらBさん、C君に割り振る
・ミドル、スタッフ層との初回面談は原則、C君が対応し、2回目以降の商談でBさんが同行し、進展を図る
という戦術を立て、実施したところ、事実、受注数アップ・売上アップを実現することが出来ました。

上述したのは顧客の立場別、つまりは顧客と営業パーソンの相性をデータからはじき出した一例です。
データを蓄積、共有、そして活用することにより営業パーソンは自身の得意領域で生き生きとその力を発揮することが出来ます。

営業と言うと、これまでは勘や根性といった体育会系のノリが通例でしたが、データ活用型営業組織を構築できれば営業を科学することが出来るのです。

「営業を科学する」を一言で表すならば

仮説を立て、愚直に検証する

ことです。

ここまでの話をセミナーなど人前ですると、「偉そうに当たり前の話じゃん」とよく言われます。
が、勘や根性、結果主義が営業組織にはいまだ蔓延しています。

データで結果を語れるようにしましょう。
データがないから勘や経験に頼らざるを得なくなります。
データがあれば最大の成果を狙った戦略を立てられます。

ツール制作、人材適性、組織編制を行うのも全てデータで裏付けを取ってからです。

営業組織力を高め、営業力を上げることを考えた場合、データを集めることにまずは慣れていきましょう。
データを集めるこそ、営業のシクミ作りにおける最初の1歩です。

ABOUTこの記事をかいた人

大川 直哉

株式会社エクレアラボ 営業担当 営業支援システム(SFA)メーカーを2社経て、エクレアラボの創業に参画。10年以上のSFA提案や導入の中で1000社以上の営業現場に関与。 得意ジャンルは1000社の営業現場で見てきた営業手法やマーケティングの失敗談。 「失敗の仕方をレクチャーしたら、クライアントはその方法だけは絶対にやらないようになるから少しは成功確率が上がる」と考えている。 小さい頃から父親の経営していた会社に入ろうと考えていたので、甘ったれな根性が染みついている。(自身が大学生の時、親の会社が倒産し、世の中は決してぬるくなく、思い通りにいかないことを痛感。にもかかわらず甘ったれでボンボン気質が抜けないというのが周囲の評価。) 趣味はJリーグ観戦。