ヨシダ・オート株式会社に営業インタビューしてきた
今回はボルボの正規代理店であるヨシダ・オート株式会社の代表取締役 吉田 宗之さんに同社の営業手法についてインタビューさせていただきました。
会社名 | ヨシダ・オート株式会社(ボルボ・カーズ文京) |
設立 | 1990年4月 |
所在地 | 〒113-0001 東京都文京区白山1-26-20 |
WEB | https://www.vc-bunkyo.co.jp/index.html |
事業内容 | ボルボ正規代理店(ボルボの新車、中古車の販売) ボルボ・カー・ジャパン株式会社 認定ボルボ・ディーラー |
社内体制 | 営業 8名(全社 24名) |
カーディーラー(自動車ディーラー)の営業
ヨシダ・オートのサービス
弊社はボルボの認定ディーラーです。
日本国内の認定ディーラーは約100店あり、弊社は文京区・台東区・豊島区・荒川区エリアをテリトリーとして販売活動を行っております。
ボルボの新車の販売はもちろんのこと、ボルボ中古車の販売、そしてボルボをご購入いただいたオーナー様(※)の車の点検やメンテンナンスが主活動です。
※同社では既存顧客(ボルボを購入し、現在乗っているお客様)のことを「オーナー」と呼ぶ。
ターゲット顧客
ボルボはご存知の通り、良くも悪くも独自の立ち位置を獲得したブランドが日本国内では構築されていると私は思っています。
良い意味で言えば「安全性にこだわった北欧(外国)自動車」、悪く言えば「まだまだマイナーな外車」というのが日本におけるボルボの印象ではないでしょうか。
実際、ボルボの自動車の特長は「安全性」です。
初めて自動車に乗る方や高級車に憧れている方の比較対象にボルボが入ることは少なくことから、車を何度も乗り換え、自動車に求める要望の優先度が
安全性 > 走行性能・輸入車独特のデザイン・燃費・価格・・・・
という方々がターゲットとなります。
これを年齢層に置き換える、50代以上の子育てが終わった世代の方ではないかと考えています。
カーディーラーの営業ではやはり新規重視なのか?
カーディーラーの営業といえば確かに大川さんの仰る通り、新規開拓の目標(ノルマ)が厳しい、というか高く掲げられていることが多いことでしょう。
特に国産車ディーラーはご存知の通り、広告ボリュームが段違いです。その分、新規のお客様の来店機会が多く望めることから必然的に新規顧客開拓の目標が高くなっているのだと思われます。
一方で弊社ですが、上述した通りターゲットが限られていること、さらにはエリアも限定されていることから新規のお客様の来店は国産車ディーラーに比べると多くは望めません。そのため、オーナー様の趣味・嗜好・自動車ライフサイクルをしっかり把握したうえで、コツコツと提案活動を行うようにしています。
また会社経営の観点からもフロービジネスではなく、ストックビジネスにしたいと考えています。
ストックビジネスというと、今のビジネス界ではサブスクリプションモデルだと思われがちですが、我々カーディーラー業界においてはオーナー様(既存顧客)に適切なタイミングでしっかりとまた自社ブランドの車に買い替えていただくことを指します。
一定サイクルでの買い替えがコントロールできるようになることで、会社経営上、数年先の売上見込が計算できるようになります。
新規のお客様を獲得することを決して軽視しているわけではなく、ストックビジネスモデルを確立できないことには自転車操業的な営業をいつまでたっても繰り返すことになってしまうのでオーナー様への営業活動を重視しているというわけです。
既存顧客への営業方法
ストックビジネス化を実現するためにはオーナー様のVOLVO、さらにはヨシダ・オートに対する満足度を常に高く保つ必要があります。
高い満足度の結果として定期的に買い替えてくれる、私はそう思っています。
そのために弊社にて出来ることは・・・・
1.VOLVOに安全安心に乗っていただくこと
2.車以外にも日常を楽しむ体験の提供
と捉え、出来ることを徹底して行っています。
1から順に説明していきます。
安全安心に乗っていただくために、弊社では6カ月に1回の点検を行っています。
一般的には24ヶ月に1回の点検が常識となっていますが、安全性を売りにしている以上、自動車の性能だけでなく、サポート面でも手厚さが必要ではないかと考えました。
また6ヶ月に1回の点検があるということは、オーナー様と営業マンに最低でも6カ月に1回は接点が出来ます。
接点を増やすことでオーナー様の趣味・嗜好を深く知る機会が増えます。オーナー様のことが深く理解できれば乗り換え時期に正しい提案を行うことが可能となります。
このように6カ月点検により安全安心を確保するだけでなく、顧客理解の場であり、提案機会を作る場に出来るというわけです。
営業マンのスキルの開発や指導・育成は当然のことながら必要です。しかし中小企業においては教育と同等に、いやそれ以上に会社的なシカケで営業マンが提案しやすい、販売しやすい環境を構築することが重要だと私は考えています。
次に「車以外の日常を楽しむ体験の提供」について説明します。
弊社ではAttic Squareというオーナー様限定の会員制プログラムを展開しています。
月替わりに様々な企画を用意し、オーナー様に楽しんでもらうためのプログラムです。
たとえば、8月にはパーソナルカラー診断というテーマで、プロのカウンセラーを弊社ショールームに呼んで、オーナー様に「本当の自分の色」を発見してもらうための機会を設けました。
カーディーラーは車を買う店だよね、なのになんでそんなプログラムまで、それも無料でやっているの?とよく尋ねられます。
自動車って高価な買い物じゃないですか。にも拘わらず、売ったら終わりというスタンスの営業マン、カーディーラーがいっぱいいます。お客様は高いお金を払って当店の自動車を選んでくれたわけです。そう考えると、当店を選んでいただいたお客様にはもっと感謝すべきで、感謝を形に表すためにどうしようか・・・と考え、自動車以外にも様々なモノやコトを提供していくことに至りました。
また点検と同様、月替わりの企画をオーナー様に案内するために営業マンが接点を持つ機会になるため、営業機会の創出にもつながる付帯効果が望めることも狙いの1つです。
子連れのお客様用が子供を解放できるショールームの一角
個人営業、それともチーム営業?
ところで、カーディーラーの営業というと個人戦のイメージがあります。むしろ同僚はライバルどころか敵だ!と敵対視するほどの関係と伺ったこともあるのですが、御社では如何でしょうか?
大川さんの仰る通り、カーディーラー業界では個人営業というか個人商店的な営業スタイルが多く、インセンティブという金銭的報酬で個人の営業力の最大化を図っている営業戦略がメジャーだと思います。
実際、弊社においても以前までは個人営業でした。
そして数年前からチーム営業への転換を掲げ、ようやく少しずつですがチーム営業が実践できるようになってきたかなと感じています。
具体的な話をしていきましょう。
まず弊社は営業7名で、営業マネージャーが1人という営業体制を敷いています。
営業マネージャーが年間予算を四半期、月次目標に落として、営業マンとコミットします。
前年度数字をもとにして、オーナー様(既存顧客)が60%、紹介で得られるであろう新規顧客が10%、新規来店が30%は望めると鑑みて、売上目標の内訳を作っていきます。
そして中堅営業マンがオーナー様中心、若手が新規を中心という割り振りです。
営業マン個人の目標達成は当然のことながら、チームとしての目標達成にこだわるよう週に1回の営業会議で口酸っぱく繰り返していたところ、最近になってようやくチーム営業になってきました。
たとえば目標達成のために若手が今進めている商談を決めねばならないという時に、中堅営業マンが自発的に同席して商談をサポートしてあげる、というシーンがありました。
BtoB営業の一般的な法人企業からすると「何を当たり前な・・・・」と思われるかもしれませんが、BtoCでは営業チーム内で支え合える、知恵や経験を共有しあう文化がありません。
そのため中小企業ではスーパー営業マンに売上数字依存してしまうのです。
弊社としては野球に例えるならば高打率バッターを育てるのではなく、確実に全員が2割以上を打つことができる、平均水準の高い営業チームを作っていくことを目指しています。
「この営業マン」ではなく、「この会社と付き合いたい」へ
ところで、BtoBでは意図的な顧客の担当替えで営業機会を創出させてる会社があります。
オーナー様(既存顧客)重視の営業戦略を採られている御社だと、このような配置換えは難しいものですか?
BtoCだと、それもカーディーラーのような他の店舗でも取り扱っているような商品を販売している会社だと商品的付加価値で差がつけられません。
となると「良い営業マンだったから」という理由が購入要因となることがあります。
でもこの営業マンが購入要因であるというのは非常に危険です。
極端な話、その営業マンが他の自動車ディーラーに移ってしまったら、顧客も移ってしまうことがありえるのです。
弊社としては「オーナー様と、営業マンという【点】」での関係性ではなく、「オーナー様と会社という【線や面】」での関係構築を理想とし、活動しています。
Attic Square(オーナー様向けプログラム)もそのための1つの取り組みです。また「●●さんも良いけど、お店のどのスタッフも変わらぬ対応をしてくれるんだな」とオーナー様に感じていただく事を営業チームには目指してほしいなと思っています。
営業チームのみんなの水準が上がれば、高品質な顧客対応により線や面の関係が作ることができます。そうなる頃には(繰り返しになりますが)ストックビジネス化が出来ているはずです。
営業マン教育について
最後に、貴社の営業マン育成方法について教えてください。
年に1~2回ほど外部講師を呼んだり、ボルボ・カー・ジャパンの教育プログラムを活用したり、または弊社内で四半期に1度勉強会を行って、営業マンが学習する場を設けています。
営業のスキルアップに学習は欠かせません。
けれども押し付けの学習ではスキルアップはおろか、下手するとモチベーションの低下を招いてしまう恐れがあります。
よって学習の機会を提供することはもちろん重要なのですが、それ以上に私が重要視していることがESの向上です。
ES向上施策
オーナー様の満足度向上(CS向上)のために様々な施策を打っているのはここまでお伝えした通りです。そしてCS向上のためにはES向上があってこそだと考えています。
でも企業経営者と従業員が対等だったり、平等な関係を維持することは難しく、従業員って経営者からの理不尽な要求に耐えるのも資質として必要ではないのですかね?
組織である以上、会社にはルールが必要です。利益の追求を目的とする会社組織では、その長である経営者の求めるルールが「正」となりがちで、会社で働く社員にとっては息苦しく感じることが多くあるでしょう。
特にディーラー稼業においては営業マンに厳しいノルマを課すなど、他に比べてブラックな要素が多い(多かった)ことから、ディーラー業界には嫌気が差して他業界へ従業員が転職したという話をよく聞きます。
従業員の求める安定した生活を提供できなくてはCS向上どころではありません。
以上を鑑みて、弊社ではホワイト労働の徹底など快適な環境を構築し、ESを高めることに努めています。
具体的には年に1回は私と社員全員が労働環境の改善について話し合う場を設けました。この話し合いのポイントは「発信された意見の中から少なくとも1つは具現化(実践)する」という点にあります。
たとえば、最近だと年間休暇を直近3年間で13日増やしました。また最新のボルボを貸与し、一泊二日のドライブ旅行をプレゼントすることも始めました。
休みが単純に増えたことで、プライベートを充実したものにしてもらうことだけでなく、休みに家族・恋人との遊びを楽しんでもらうために最新のボルボに乗れます。
旅や遊びの過程を彩ることも車の目的の1つです。社員が自分自身のオフをボルボに乗って満喫した体験をオーナー様に伝えたり、共有することが出来たらと思って実施しました。
また、ESについてですが、顧問の社会保険労務士の立ち会いのもと、年1回、全社員からESアンケートを取って集計してもらっています。現状確認を怠らないようにすること、そして常に改善を加える余地がないかをチェックしてます。
ESアンケート結果(一部)
ESが上がることで、オーナー様により良い営業サービスを提供しようという意識、そして高いサービスを提供するための学習意欲が湧くでは?という仮説のもと、目下検証中です。
ちなみに2018年末に店舗改装を予定していますが、それにあわせてバックオフィスも北欧風に改装する予定です。働く環境の改善によって少しでも快適になればと思っています。
オーナー様(既存顧客)が安心して自動車ライフを送るためのカーディーラーの努力と工夫を今回は垣間見ることが出来ました。ES向上のための取り組みは自動車ディーラー業界のイメージを覆すものでした^^;
※実際に他のディーラーで働いていて、ディーラー業界にうんざりしていた方から問合せが数件あったとのことです。
吉田社長、ありがとうございました!
ヨシダ・オート(ボルボ・カーズ文京)について詳しくは下記ホームページをご覧ください。