案件管理とは(売上見込管理)
先日、ある企業から売上アップに関するご相談をいただきました。
お悩みを紐解いていくと
どの案件に対して、どれくらいの工数がかかっていて、また利益率が不明瞭のまま工数をブッコんでいる
という問題点がありました。
よってまずは案件管理を徹底することが課題解決策になったわけですが・・・、案件管理って何からやればいいの?という相談が次にきました^^;
ということで今日は案件管理について営業組織レベル別に考えていきます。
そもそも
「案件管理」
この言葉の定義は会社によって異なります。
たとえば、web制作会社では受注したweb制作プロジェクトの進捗管理のことを意味する事が一般的です。
今回、書いていく案件管理とは受注前の話のことで、いわゆる
各営業パーソンがいつ、いくらくらいの商談を受注する予定(つもり)なのかを見込んでいるか
を指します。
案件管理を共有し、徹底することは様々なメリットをもたらします。
会社・経営視点で言えば
来月以降にどれくらいの売上が見込めるかという精度が高まり、先々を見越した一手を打てる経営体制にシフトできます。
営業マネージャーなら
受注のためにどうすれば良いのかを営業社員に寄り添って考えることが出来たり、営業チームの受注率を上げるために何をすればいいのかなど営業活動上の改善点が見えてきます。
また営業パーソンの立場であれば
その日その日の営業に追われることなく、予算・ノルマ・目標を達成するためにどの案件に対してどういった手を打てばいいのかといった将来の売上達成を見越した戦略的思考を身につけることができます。
上にあげたメリットというか、経営・営業体制を敷くべく営業部門を抱える全ての企業においては日々、案件管理を思考錯誤し、自社に合った案件管理の方法を模索しています。
案件管理【初級編】
ではまずは初級編。
・案件管理をこれまでやったことがない
・会議やミーティングで都度、Excelで案件リストを作成している
・会社を興したばかりで、1人または2人で営業を行っている
このレベルの営業チームや会社が初級対象です。
案件管理には
案件情報を共有するツール
管理すべき情報(内容)
情報の精査タイミング
大きくはこの3つがレベルに応じて異なります。
案件管理初級者にオススメのツール
私がCRM/SFAメーカーであるから言うわけではありませんが、どのレベルにおいてもSFA(営業支援システム)を利用するに越したことはありません。
ただ、初級レベルにおいてはコスパが悪いと言えます。
※なぜコスパが悪いのかは中級レベル以降の内容をご覧ください。
よって、ツールとしてのオススメはGoogleスプレッドシートです。
Excelでも構いませんが、web上で簡単に共有でき、尚且つ更新できるスプレッドシートの方が、営業人員増加を見越した際に利便性が高いと言えます。
ではGoogleスプレッドシートをどう使うかは次項をご覧ください。
案件管理初級者が管理すべき情報
初級レベルでの案件管理の目的は
どんな商談を動かしているかの備忘録
タスク管理
商談(リード)発生要因の分析
の3つです。
また案件管理を初めて行う場合は管理項目を少なく設定し、運用のしやすさに気を配ることも重要です。
以上より次の項目をオススメします。
管理項目 | 目的 |
発生日 | 案件発生日のこと。毎月の案件創出数をカウントするため |
案件名 | 何を提案しているのかを把握するため |
顧客名 | 提案先の企業名を把握するため |
顧客担当者 | 提案先の担当者を把握するため |
ランク(受注確度) | 見込レベルをパッと見て把握するため |
(想定)売上金額 | 将来の売上予測を立てるため |
(想定)粗利額 | 将来の粗利予測を立てるため |
受注予定月(日) | 将来の売上・粗利予測を立てるため |
きっかけ | マーケティングの打ち手を考える際の材料にするため |
直近商談日 | 直近商談日から一定日数を超えた(放置した)際に気付けるようにするため |
次回予定日 | アプローチ漏れを予防するため |
商談内容・備考 | 商談備忘録として |
理由は上の表の各項目に書いた通りです。
初級レベルでは共有する人、マネジメントする人がいないので自分自身のために案件管理を行います。備忘録的な意味合いが強いので、上の項目の中から皆さんご自身に必要だと思う項目を抜粋して、管理してみてください。
ご参考までに運用例が下図です。
案件情報を精査するタイミング
これはレベル関係なく同じなのですが、リアルタイムで更新していかなければなりません。
週1回でよくない??
というリクエストをよくいただきますが、週1回だと稀に漏れが出ます。どうしても見込度(ランク)が高いものや金額が大きい案件を優先して書いてしまい、見込みが薄かったり、小さな案件を記載し忘れてしまうことがあるのです。
リアルタイムに更新してたら手間がかかりすぎる!!(怒)
というご意見も案件管理あるあるです^^;
冒頭のご相談いただいた会社からもまさにこの意見、というか反論をいただきました。
確かにリアルタイム更新は手間がかかります。
なので、私の場合、営業社員1名あたりが同時進行可能な案件総数を必ず尋ねます。
ルートセールスではなく、いわゆる案件型セールスの場合、たいていは5~50件くらいで、平均的には15~25件程度です。
もしこれ以上の案件を抱えている場合は案件管理を行う以前の問題で、営業パーソンの業務キャパシティを超えている可能性が高いでしょう。
よって、その場合は1人あたりの業務負荷の見直しの方が案件管理より優先すべき事案と言えます。※業務キャパシティを測るために案件管理を行うこともあります。
進行中案件が30件未満の場合、案件情報の更新対象となる1日当りの件数は多くても3~5件程度です。
1件の更新が多く見積もって5分だとしても、最大25分です。
25分を確保することが無理!
とお考えになられる企業であるならば案件管理を行う素地というか文化を育てることは出来ません。
繰り返しになりますが案件管理は営業戦略面でも営業戦術面でも必要となる手段なのです。
25分を捻出できないのであれば、現在のリソースでは戦略的改善の余力がないとご判断ください。
案件管理【中級編】
続いて中級レベル。
中級を念のため定義してみると・・・
・初級レベルをクリアした営業チームである
・Excelで定期的に案件情報を共有している
・案件の動きや売上予測はある程度のレベルで出来ている
というレベルです。
中級レベルが次に目指すべき案件管理のステージは
仮説−検証組織の土台作り
営業パーソン別の得意領域の見える化(太字)
です。
中級レベルになってきた営業チームであればたいていは、売上・粗利目標以外にKPIが設定するようになっているはずです。
また、情報の中から営業パーソン各々が得意とする企業(規模や業種など)、担当者タイプを見極める、いわゆる営業パーソンの適性を把握することも可能になってくるフェーズです。
案件管理中級者にオススメのツール
KPI測定、そして営業社員の適性を見抜くことに最適なツールを会社は用意せねばなりません。
結論から言うと、中級レベルになるとSFA/CRM(営業支援システム)を導入すべきでしょう。
なぜExcelではなくSFAなのか!?
まず、営業社員適性については業種別、従業員規模別など適性を見抜くために必要な項目をExcelに設けて、データを蓄積していけばいいので、Excelで運用することは可能です。
またKPIについても同様にExcelで賄えるでしょう。
以上よりExcelでも十分に目的を満たすことは出来ます。
しかし、Excelでは2つの目的を満たすことしか出来ません。
どういうことかというと・・・
たとえば営業社員の適性をある程度把握できてきたら、当然のことながら適性に合った顧客をマッチングしたくなるはずです。
ところがExcelには営業社員のKPIと適性データしかありません。
そう、顧客に関するデータがExcelにはないのです。
このようにExcelは社内の改善ポイントを見つけること=検証 に関しては役立つツールです。
けれども検証後の仮説立案、もう少し踏み込むとPDCAのPを効果的に立案する際には役立ちません。
効果的なPlanの立案にはデータベースが必要となります。
SFA/CRMは営業社員と顧客のデータベースで、まさしく中級レベルの目的を満たす際にピッタリのツールです。
効果的なPlanの立案について、もう少し詳しく書いてみると、例えば営業社員Aさんが50名以下の中小企業で製造業が得意であることがわかったとしましょう。
ExcelだとAさんの得意とするターゲット顧客を抽出することが出来ません。出来たとしてもそれなり、いやもしかしたら膨大な手間がかかります。
一方、SFAであれば条件を指定すれば数秒でターゲット顧客を抽出できます。
また今後、新たに発掘した見込客についてもSFAが自動的に担当を振り分けてくれます。
上述したのはあくまで一例ですが、データ検証に加えて、蓄積されたデータから具体的なプランニングが出来ることを考えると中級レベルではSFAを導入した方が良いと言えます。
案件管理中級者が管理すべき情報
ではシステムを導入してどんな情報を管理すべきかを考えていきます。
仮説−検証組織の土台作り
営業パーソン別の得意領域の見える化
これらをクリアすることが目的です。
よって事業内容や営業スタイルによって異なりますが・・・
管理項目 | 目的 |
商談実施プロセス | 課題共有、決定プロセスの確認、見積提出などのチェック項目を用意。商談進展状況を把握・共有するため |
顧客属性チェック | 業種、企業規模など顧客企業の属性を分類するための項目。営業社員の適性を把握するため |
顧客担当者属性 | 役職や立場などをチェックする項目。営業社員が得意とする担当者属性を見抜くため |
共通して言えるのはこのような項目だと思われます。
全てを一斉に取り組むと入力負担がかかってしまうので、
商談実施プロセス→顧客属性→顧客担当者属性
この順番がいいでしょう。
また商談実施プロセスについて、最初はザックリなプロセスチェックから進めていくことをオススメします。
たとえば新規開拓ならば
初回面談、2回目以降面談、見積提出、提案書・企画書提出、サンプル提供、値引き対応、上司同行
こんなところかと。
Excelで表にするならばこんな感じになります。
まずはザックリとしたプロセスを設けることには理由があります。
上の図でいうと2回目面談から先のプロセスに進む割合(私は進展率と呼んでいます)が他に比べて低いことがパッとみてわかりますよね。
「Aさんの場合、2回目の面談まで行けるのにそこから先に進展しづらくなっている」
「少なくとも2回は会えているのに提案書や見積を出す機会は少ない」
「初回および2回目の面談に何か原因が潜んでいるのでは?」
このようなことが考えられます。
最初からギッチギチにプロセスを洗い出して、それを管理してしまうと「おそらくこのプロセスが悪いだろう」という想定原因の検証になってしまいます。
それも悪くないのですが、想定していることよりもまずは事実を正しく把握することに努めるべきだと私は考えているため、上図のようなザックリしたプロセス管理を行います。
表で読み取れる情報はあくまで定量的なデータで、Excelだとこれが限界なのですが、SFA/CRMを導入していれば定量データに加えて、なぜ2回目面談まで進めてその先に進めなかったのかという定性的なデータまでをも拾うことが出来ます。
定性データを収集できることもSFA/CRMのメリットと言えるでしょう。
案件情報を精査するタイミング
案件情報の精査・更新タイミングについては初級レベルと同様にリアルタイムです。
中級レベルになると初級よりも管理項目が増えているため、入力負荷は増えることでしょう。
ですが、既に中級レベルです。
営業チームとして量ではなく質を追求するレベルになっているのです。
つまりガムシャラに訪問量を求めるのではなく、どうやったら営業品質を改善できるかに時間を割くべきです。
以上より、情報の入力負荷が多少増えることには目をつぶり、営業チームの仮説検証体制を構築することに注力すべきと考えます。
案件管理【上級編】
上級レベルをご覧の皆さんの営業チームでは既に仮説検証を行うことが当たり前、文化として根付いているはずです。
よって、このレベルで目指すは・・・
仮説検証スピードの向上
コスト削減
この2つです。
仮説検証スピードの向上
仮説検証の必要性については中級編で書いた通りです。
上級レベルを目指す営業チームにおいては、仮説検証体制は構築できており、そのスピードを高めていかなければなりません。
すでに情報をリアルタイムで入力・更新しているのにこれ以上どうやってスピードを高めるの?
という声が聴こえてきそうです^^;
ここでいうスピードとは必要な情報を即座に取り出せることを意味します。
スピードが遅い例を挙げると分かりやすいかもしれません。
たとえば提案書を提出してからサンプル提供までの日数を計測し、サンプル提供の最適なスパンを知りたいとなったとします。
データを計測するために
・提案書提出、サンプル提供を実施している案件をピックアップ
・提案書提出からサンプル提供のスパンをデータダウンロード
・スパンデータと受注傾向を照らし合わせて最適なスパンを想定
このような手順を踏まなければなりません。
遅くとも1日、営業社員が営業の合間にデータを集めるとなるともしかしたら1週間以上かかってしまうかもしれません。
データ検証は
思った時に行うことができる
に尽きます。
該当データを指定するだけで、欲している情報をすぐに抽出できるシクミ(システム)を社内に構築することが上級レベルを目指す上で欠かせません。
コスト削減
続いてはコスト削減です。
ここでいうコスト削減は販管費を減らそうといった費用の削減のことではありません。
営業生産性における営業コストの削減を指します。
上図の通り、営業コストとは商談に掛かった時間≒商談数です。
※厳密に言えば、新規開拓の場合はマーケティングに投じた広告投資などのお金についても営業コストになりますが、今回はあくまでセールスフェーズに限定します。
これって実は仮説検証スピードの向上ととてもニアリーなのですが、売上を維持・拡大しつつ、商談時間を減らすということはすなわち
・売りやすい顧客に短期間で売る
・売上ポテンシャルが大きい顧客を優先する
・営業社員の得意領域毎に分業化する など
営業効率を追求することを意味します。
仮説検証スピードの向上とコスト削減を分けて書いたのには理由があります。
たとえば「売りやすい顧客を見抜く」ことの目的はコスト削減です。
「売上ポテンシャルが大きい顧客を優先する」も同様にコスト削減です。
何が言いたいかというと
「売りやすい顧客を見抜く」ことを目的としているのではなく、営業コストの削減という目的があって、そのための手段として売りやすい顧客を見抜く必要があるということです。
図にすると・・・
このように分業もターゲット顧客の選定も、営業コスト削減のための手段に過ぎません。
つまるところ営業の改善対象になるのは効果と効率です。
今回ご紹介した初級から上級までは営業効果と営業効率を組織的に改善するための手法です。
本当は中級レベルあたりで当社のSFA/CRM「Ecrea」をゴリ推ししたいところでしたが、今日はシステムメーカーから離れて営業部門におけるレベル別の案件管理方法について述べてみました^^;
何か1つでもご参考にしていただけたら嬉しい限りです。