プレゼンテーションとは
ビジネス社会においてプレゼンテーションは様々なシーンで行うことがあります。
社内企画のための社内プレゼンテーション
営業の商談プレゼンテーション
セミナーなど講演プレゼンテーション
などなど社内外問わずビジネスをうまく進めるうえでプレゼンテーションは欠かせません。
プレゼンテーションとは
情報伝達手段の一種。聴衆に情報を提示して、理解を得るようにするための手段である
Wikipediaより
このウィキペディアに記載されている内容でだいたいのビジネスパーソンは納得でしょう。
ですが、私の場合は少しだけプレゼンの意が異なります。
私の場合のプレゼンテーションとは
行動喚起手段の一種。聴衆に対して課題解決策を提示して、解決に向かって1歩踏み出すための行動を要請するための手段である
を意味します。
ウィキペディアの内容が間違っているわけではなく、あくまで私の中でのは上のようにプレゼンテーションを位置づけているという話です。
プレゼンテーション(以下、プレゼン)で大切なことは目的とゴールです。
プレゼンシチュエーションによってこの2つはそれぞれ異なるため、今日は営業活動の商談におけるプレゼンに絞って話を進めてまいります。
プレゼンの目的とゴール
商談におけるプレゼンの目的とは何でしょうか?
商談状況によって異なると思いますが
・商談を進めるため
・受注、成約に運ぶため
おおよそはこの2つが目的になるはずです。
次にプレゼンのゴールです。
こちらは商談状況次第で多岐に渡ります。
・次回、決裁権者との面談をセットすること
・受注の口頭内示を獲得すること
・サービスや製品に関する一定の理解を得てもらい、次のステップに進めること など
一般的なゴール設定はこんな感じでしょう。
ところが私としてはこのゴール設定はNGです。
なぜならプレゼン直後にゴール測定が出来ないからです。
プレゼンを行ったところ・・・・
・よく理解できた
・とても良いサービスだと思う
・当社(お客さん)のことをよく理解してくださっている
など好意的な感想をもらうと、その時点で満足しがちです。
ただ、そういったプレゼンの大半は、
「社内で検討し、改めて連絡致します」
と言われて、その日は終わり。というケースが多いのではないでしょうか。
つまりプレゼンの結果、ボールを先方に投げて決断を任せることになってしまっているのです。
ボールをお客さんに預けてしまうと、プレゼン結果の良し悪しが分かるまでに時間が掛かってしまいます。またこちらでコントロールが出来ません。
お客さんにとって良いプレゼンであったならば、こちらが望む結果になるはずです。
よって、ゴール設定についてもう1歩踏み込むべきなのです。
私の場合はプレゼン後、こんな感じのやり取りを交わしてゴール達成を測ります。
・納期を●月●日頃とするならば■月■日までに結論を出していただかなくてはなりません。
(結論を出す日程を共有する)
・商談を進めるための具体的な次のステップやアクションを共有する
(次回打合せ日の仮スケジューリングなど)
次回打合せ日をいつにしましょうか?といったことをプレゼンの結果として握れることは、もちろんプレゼン結果の測定材料になります。
ところが商談が最終フェーズの場合、次のアクションを共有することがないケースもあります。そのような時に、商談の結論を出す日程を共有することは私がよく使う手です。
「商談の結論日とプレゼン結果の良し悪しに因果関係なんてないでしょ?」とよく言われますが、決してそんなことはないと思ってます。
プレゼンの中で自社商品やサービスの納期を目途に結論日を共有することができるということはつまり、
自社商品・サービスを第一候補として検討してもらえる(もらえている)
ことを意味します。
※そうでない場合も当然あり得ますが。
このように自社(営業パーソン側)を主軸として判断してもらえるようなリアクション予定日を定めようとトライすることで、プレゼン結果を測定することが可能となります。
プレゼンでゴールを意識するとしないでは大きな違いがプレゼン内容に現れます。
ゴール設定がないと、夢物語を描いて伝えがちになります。
「ウチのサービスをご利用いただくと、あんなこともこんなことも出来ます、ほら、素晴らしい未来が待ってますよ」という具合に、総花的な内容になってしまいます。
一方、ゴール設定をすると、いやゴールを設定しようとすると、どんなゴールが顧客のタメになるのか、この顧客であればどんなゴールならば目指せるのか、という風に顧客視点での行動要請を考える努力が強いられます。
そうです、ゴール設定をすることは顧客視点でのプレゼンを行うことにもなり、顧客のタメであり、自分(営業パーソン)のタメにもなるのです。
プレゼン構成を考える前に、まずは目的とゴールを明確にすることがプレゼンにおいては重要(コツの1つ)だということがご理解いただけましたでしょうか。
プレゼンの作り方
では今日のテーマである営業におけるプレゼンのコツの中で最も重要とも言えるパートに入っていきます。
それがプレゼン構成の作り方(プレゼンの作り方)です。
プレゼンは
伝える内容(コンテンツ)
伝え方(パフォーマンス)
この2つで構成されています。個人的にプレゼンが上手な人というのは前者の伝える内容、つまりコンテンツ制作力に長けた人のことを指します。
プレゼンに置いて、7:3~8:2くらいの比率でコンテンツの方が重要だと私は考えてます。
伝え方はもちろん大切ですが、あくまでも内容があってこそです。
ではそれぞれのコツを順に説明していきましょう。
プレゼンコンテンツの作り方のコツ
まずプレゼン準備の全体像をご覧ください。
図の通り、プレゼンコンテンツは大きく5つのステップに沿って制作するべきです。
ステップ1のゴール設定については既に上述した通りなので割愛し、ステップ2から順に詳細を書いていきます。
プレゼンコンテンツ制作のコツ【顧客の問題点を明確化】
プレゼンでは、見込客の悩みやお困りごとなど問題点を解決する方法を提示し、合意してもらい、要請した行動(≒購買行動)を取ってもらうことが目的です。
そのためにはまず見込客の問題点を明確化する必要があります。
私は簡易的に問題を構造化することで、自分にとっても顧客にとっても分かりやすく問題点を明確(明示)化します。
問題構造化については私がダラダラと書くよりも
※問題解決入門 著:佐藤允一氏
こちらの本をご覧いただいた方が間違いなく早いと思うので、ご興味ある方はご覧ください。
身近な例を挙げてみましょう。
親戚の子供が大学受験を迎え、志望校に入るために一生懸命勉強しています。ところが、直近の模試ではC判定で、今のところ合格の可能性は高くありません。色々とヒアリングしたところ、次のように問題を構造化できました。
図内にも書きましたが、原因分析において本当はロジックツリー形式でMECEに掘り下げるべきですが、今回は分かりやすくするために割愛してます。
ここに挙げた原因の中で子供自身(または家族)が手を打てるのは
・勉強量が足りない
・バイトが忙しい
・塾の教え方が悪い
の3つです。
つまりこの3つが問題点と言えます。
プレゼンコンテンツ制作のコツ【課題解決策を検討】
次に、問題点を課題に置き換えます。課題は問題点に対して解決する意志を込めたポジティブな表現になります。今回のケースだと
問題点:勉強量が足りない → 課題:勉強量を増やす!
問題点:バイトが忙しい → 課題:バイトを減らして勉強に注力する!
問題点:塾の教え方が悪い → 課題:教え方の良い塾に替える!
といった感じの課題に置き換えられます。
課題まで抽出できたら、次は解決策です。
課題:勉強量を増やす! → 解決策:1日3時間は勉強する
課題:バイトを減らして勉強に注力する → 解決策:バイトを週1にする
課題:教え方の良い塾に替える! → 解決策:3つの塾で体験学習を受ける
解決策のポイントとしては具体的な数字を入れることです。
数値目標が入っていなければ、検証することが出来ません。
解決策が正しいアプローチだったのかどうかを検証するためにも解決策には数字(数値目標)を入れましょう。
そしてここからが重要なのですが、課題および解決策が一通り出そろったところで優先順位を検討します。
全ての課題に取り組んでもらえればそれに越したことはありません。
しかし、見込客が企業であっても個人客であっても課題解決に費やせるリソース(経営資源)は限られています。
問題改善への影響力や取り組みやすさ、コストなどなどいわゆる費用対効果が大きい解決策から着手しなければなりません。
そしてこの優先順位をつけてあげることも営業パーソンの仕事の1つです。見込客は背中を押してもらわねば動けないからです。
ここまでしてようやくステップ3までが完了です。
プレゼンコンテンツ制作のコツ【断られる理由の洗い出し】
指摘すべき問題点、そしてそれに対する解決策が定まりました。
この2つが決まればプレゼンコンテンツ(提案書や企画書)を制作することが可能です。
なのですが、まだコンテンツ制作に取り掛かってしまってはいけません。
制作する前にプレゼンした際に望んだゴールに達しない場合の
断られる理由
を先に洗い出しましょう。
先ほどの問題点に対する解決策に加えて、断られる理由をコンテンツに散りばめておくことで、ゴール達成率を高めることが狙いです。
いわゆる反論を先に潰しておくということを実践するということですね。
断られる理由を洗い出す時の考え方の一例を挙げると・・・・
A:なぜ、課題解決のためにその製品・サービスを買わなければならないのか
をまず考えましょう。
この問いに対する答えがいくつか挙がったら次は・・・・
B:なぜ、貴社(自社)や貴方(自分)から買わなければならないのか
を考えます。
そして最後に・・・・
C:なぜ、今買わなければならないのか
を考えてください。
ABCについてもう少し解説していきます。
まずAを考えるべき意図としては見込客が皆さんの製品やサービスを買う理由を明文化することです。
そしてBは、皆さんの会社や皆さん自身から購入する必要性を問う質問です。
Bの回答は見込客がどの会社から購入するかと考える際の判断基準になるはずです。
つまり見込客の購入判断基準を教育することがBの最終目的です。
最後のCは今、動かない(購入しない)と見込客が損をしていることを指摘するための材料になります。
プレゼンで指摘するのは見込客の課題です。課題があるということは何かしらの損や不利益が見込客に生じている状態を意味します。これをCによって明確にするのです。
さあ、断られる理由を洗い出すことは出来ましたか!?
ここまでで材料の用意を完了です。あとはコンテンツという名の料理に仕上げるだけです。
プレゼンコンテンツ制作のコツ【具体的なコンテンツ設計】
ようやくプレゼンコンテンツ、資料の作成の説明に入ります。お待たせしました^^;
大まかなコンテンツストーリー(コンテンツ配分)について、まずは下図をご覧ください。
私の場合、プレゼン資料を作る時には図の通り、4つのパートに区切って考えています。
そしていずれのパートにおいても共通して考えていることは見込客が知りたいこと・聞きたいことです。
たとえば1の共感パートならば自分(営業パーソン)の自己紹介をしつつ、さりげなく見込客と同業種だったり、同様の課題を抱える企業を何社も手伝ってきたという実績を紹介します。するとプレゼンの聞き手は「あ、この人はウチの課題解決について結構ノウハウを持っているかも」と聴く姿勢を作ってくれます。
聴く姿勢を作ることはプレゼンにおいて1、2位を争うくらい重要です。
如何に2以降のコンテンツが優れていようとも、聴く姿勢がなかったらプレゼンはうまくいかなくなってしまいます。
よって見込客の属性や、プレゼン本命度(自社が本命か二番手か、はたまたそれ以下か)に応じて共感パートは変えなければなりません。
※当たり前のことですが、プレゼンでは個社・個別対応のコンテンツを毎回作る努力が必要です。
続いて2の問題点・課題共有について。
見込客の理想や目標、そしてそれに対する現状とのギャップ(問題)、更には問題を引き起こしている問題点と課題についてはサラッと軽めに説明しましょう。
というのも問題点や課題は見込客自身が日々問題意識を抱えており、痛いくらい体感していることです。出来ていないことの指摘になるので聞き手にとっては聴いていて一切面白くありません。
ただ以下2点については別です。
・抱える問題点がどんな風に辛いかを具体的な場面をイメージして表現する
(Ex.部下の営業社員が売ってこない事に対して叱責することもあるでしょう、でも叱責している皆さんの方が辛いですよね。私もそうなんです。)
・見込客が抱える課題を解決して、劇的に成長を遂げた事例を提示する
まず具体的なイメージ表現を行う目的としては感情を刺激することです。
感情を刺激することで、プレゼンに対して感情を移入してくれます。
この人(営業パーソン)はわが身のことを案じてプレゼンしてくれている
このように思ってもらえると核心に迫るこの後のパートがより有効打になるのです。
※実際、顧客の身になって皆さんプレゼンしているはずです。そのスタンスをテクニカルに伝えようという話です。
同様に事例もストーリーで語りましょう。
「●●社は当初、~~という課題を抱えていて、責任者である■■部長は「~~」とボヤくことが日課で(笑)」的なリアルなストーリーで語ることで聴衆を引き込みます。事例であることからここでもさりげなく経験をPRすることが出来ますし。
そしてメインディッシュともいえる3で解決策を説明します。
1、2からの流れで共感を得ており、尚且つ的を得ているならば解決策の説明時には「うん、うん」と前のめりの反応を獲得できるはずです。
さらにダメ押しとなる判断基準を教育していくわけです。
判断基準は見込客にとって光って映る価格面、機能面、経験(ノウハウ)面のいずれか、もしくは組み合わせで説明します。
3までで一旦、合意形成と質疑を挟みましょう。
ピントがズレている場合の軌道修正、聞き手の小さな反論を潰しておくことが目的です。
合意形成と質疑応答が済んだら、いよいよ行動要請です。
ここは準備の通りで下記のように、こちらが求めるアクションを堂々と要請するだけです。
「(課題解決のために)次に採るべきアクションは●●です。さて、具体的にいつにしましょうか?」
ここまでくると皆さん(営業パーソン)は顧客から見た時に、いっぱしの営業パーソンではなく、見込客内のプロジェクトリーダーや課題解決専任代理社員という立場になっていることでしょう。
1~4を上述の通り、完遂できればプレゼンは良い結果になっているはずです。
冒頭に書いた通り、プレゼンコンテンツだけでなくパフォーマンス(伝え方)も結果には関わってきます。プレゼンにおける伝え方についてはまた後日、当ブログで書こうと思ってます。
プレゼンのコツまとめ
この記事でお伝えしたプレゼンコンテンツの作り方ですが、
プレゼンの都度、ここまでやらなくちゃいけないのかよ
と思われる方もいらっしゃると思います。
結論から言うと「やらなければいけない」のです。
ワンパターンのプレゼンならばweb動画で十分です。web動画や電子カタログなど営業ツールのIT化が劇的に進化している今日においては個別具体的な営業アクションこそが営業パーソンの価値なのです。
ちょっと熱く語ってしまいましたね^^;
では今日のまとめをすると、プレゼンにおいては共感・インパクト、課題共有と解決策の提示、判断基準の教育、行動要請の4つのポイントがあるということです。
そしてこの4つのポイントそれぞれには
共感・インパクトは経験と場数
課題共有はロジカル思考
判断基準の教育は会社・個人のノウハウ
行動要請は勇気
というスキルとマインドが必要なのだなって最後に思いました。
皆さんがプレゼンのコンテンツを作る際の一助になったら嬉しいです。