今回はソフトウェアメーカーA社の営業部長 宮本さん(仮名)と「代理店営業における売上アップのコツ≒代理店攻略」をテーマに対談してきました。
当初は社名オープンという話をしていたのですが、リアルすぎる内容から最終的に社名とお名前を仮名とすることになりました。宮本部長(仮名)には、なかなかWEB上にはオープンになっていない代理店営業のノウハウを存分に語っていただきました。
商社などに対して代理店営業をしている営業マン、営業マネージャー、経営者の方は必見の内容です。
A社概要
事業内容 | 特定業種向けのソフトウェアの開発および販売 |
営業ミッション | 新規顧客の開拓と、既存ユーザーへのクロス(アップ)セルによる売上拡大 |
営業マン人数 | 20名弱 |
代理店ビジネス(間接販売)モデルとは
まず直販(直接販売)営業モデルについて解説してみます。
その名の通り、直販とはサービス提供会社である売り手が直接、買い手となりえる人を見つけて、受注に導く営業活動のことを指します。
一方、間接販売(代理店)営業モデルでは、サービス提供会社ではなく、代理店・パートナー・リセラー(以下、代理店)と呼ばれる会社が見込客を見つけて、時にはクロージングもかけてくれます。
弊社の場合、特殊なソフトウェアを提供しているため、見込客紹介までを代理店が担ってくれていて、ソフト紹介からクロージングは弊社営業マンの担当です。
よってマーケティング(見込客創出)フェーズを代理店営業マンが行ってくれていると言えます。
特殊(ニッチ)なソフトウェアゆえにWEBマーケティングよりも地上戦(リアル営業)の方が、期待効果が大きいことから代理店営業モデルを採っています。
直販営業だとリーチ可能な見込客の数は自社の営業人員に比例します。
ところが、代理店営業だと代理店の営業マンの皆さんが、弊社営業マンの代わりに見込客を見つけてくれます。代理店の営業人員規模が大きければ、多くの見込客を発掘することが出来るわけです。
そして、弊社営業マンは見込客発掘ではなく、商談を決めることに注力できます。
営業マンが20人にも満たない弊社であっても全国の見込客にリーチできること、これこそが代理店営業の必要性と言えるでしょう。
代理店営業のコツとは
まず大前提として、代理店営業とは会社(自社)対会社(代理店)ではありません。
会社(自社)対代理店営業マンなのです。
代理店が自社の製品を取り扱ってくれることになったから安心♪・・・・・
していては絶対に売れません。
現場の営業マンに対して、地道に出向いて自社製品のプロモーションを行わなければなりません。
よく言われる勉強会というアプローチですね。
そのうえでさらに代理店営業モデルを大きくしていくには、大きく二つの営業スキルが求められます。
まず代理店攻略スキル。代理店が弊社の商品を「もっと売りたい!」「顧客に紹介したい!」と思ってもらうためのアプローチです。
そしてもう1つが三方よし商談スキルです。これは代理店に紹介いただいたお客様(エンドユーザー)との商談の時に必要なスキルです。
それぞれに細かいテクニックがありますので、1つずつ紹介していきましょう。
代理店の営業マンを見極めよ
代理店の営業マンの中には積極的に「売ってくれる(リードをくれる)人」と「売ってくれない人」がいます。
彼ら、彼女たちにとって得意な商材かどうか、旨み(代理店社内成績に寄与)があるかどうかなどで売る姿勢が決まります。
※営業マンの成績に大きく寄与するかどうかが大きなポイントなのですが、これは商品のブランド力やサービス提供者(売り手)と代理店の関係性次第なので今日は割愛します。
代理店営業をする際、「売ってくれる人」「売ってくれない人」の判定を行うことが代理店攻略の最初の1歩です。
私の場合、売ってくれる人には自社のエース級営業マンをつけて、出来るだけ商談が決まるようにサポートするようにしてます。
代理店の営業の方は、商材の説明方法やデモンストレーションの仕方に凄く敏感です。
お客様の機微を感じ取って、説明できる営業マンでないと、次の商談から「この前、同行してもらった営業の方とは違う人でお願いします」と代理店営業マンから私に依頼があることも少なくありません。
なので、売ってくれる人にはエース、、、とまではいかなくてもそこそこ以上売れる営業マンを配置するようにしています。
営業マネージャーがこういった際に判断を誤ると、代理店の中で「あの会社(メーカー)は売る気があるのか」と不信感が募っていき、代理店内で自社製品を活性化させることが出来ませんのでご注意ください。
中立・消極派に成功体験を与える
積極的に売ってくれる代理店営業マンの多くは「弊社製品をお客様に紹介し、成功体験を得た人」です。
裏を返せば中立、消極的な代理店営業マンには成功体験が少ない、もしくは「ない」のです。
よって成功体験を得ることが出来そうな商談を一緒に行うことが必要となります。
そのためには・・・
・どんな商談であれば自社製品が決まりやすい(受注しやすい)シチュエーション
・決まりやすい商談が発生しやすい顧客の特徴
・積極派の代理店営業マンに自社製品を売る理由を聞いておくこと
などなど売ってもらうための動機付けを様々な角度から用意します。
私がやっていたのは具体的な業種をあげ、「ターゲット企業の●●部の課長職の人にこのチラシを持っていて、少しでも共感を得てもらえるようであればメーカーの営業を連れてくるので5分だけお時間ください」と伝えてください!と代理店営業の方にレクチャーしてました^^;
繰り返しになりますが、上図のようなシカケを用意して、最初の商談で成功体験を得やすくするように仕向けることが代理店営業においては重要です。
異動情報には代理店よりも敏感に!
たとえば自社の製品を担いでくれていたマネージャーが異動で他の拠点に行ったとします。
その場合、マネージャーは積極派なので、その拠点で新たな積極派営業マンを増やすチャンスと言えます。
逆も然りで、めちゃくちゃ売ってくれていた営業マンが消極派マネージャーの拠点に行ってしまうケースなどもあります。この場合はピンチではなく、チャンスととらえ、マネージャーのところへ伺い「●●さんには弊社製品をとてもとても売っていただきました。そのコツをこの拠点の営業の皆さんに共有させていただきたいのですが・・・。会議の中のどこかでお時間いただけませんか?」と打診します。
このように中立・消極派を積極派に変えるチャンスが得られるわけです。
あと、当たり前のことですが。異動後には他のメーカーなどよりも先に、とにかく早く挨拶に伺いましょう。
代理店など商社機関はえてして大企業、大組織のため、良くも悪くも昔ながらの商習慣を持っています。なのでフットワークが軽く、情に厚い対応を好む人が割と多いかなという印象を持ってます。
ザックリとですが、ここまでが代理店攻略スキルの話です。
メーカー、代理店、お客さんの皆が喜ぶ三方よし商談とは
続いて、代理店から紹介をもらった商談で気を付けるべきポイントがあれば教えていただけますでしょうか?
商談をしっかりと受注に導くこと、そしてお客様にとって正しい決断が出来ることを支援すること、これが商談における営業マンの役割だと私は思ってます。
この2点については直販営業でも代理店営業の商談でも変わりはありません。
でも代理店営業の商談の場合、受注だけがゴールではないのです。
たとえば、お客様を紹介してくれた代理店がソフトウェア以外にサーバーやコピー機(複合機)といったハードウェアの販売も行っていたとしましょう。
この場合、商談のふとした時やアイスブレイク中に
「そういえばコピー機はどちらのものをお使いですか?」
「リース期限はいつまでですか?」
といった内容を代理店営業マンに代わって質問してあげます。
私達からすれば、懇意にしている代理店営業マンがお客様に尋ねればいいじゃないか、と思う内容ですが、実はこれが重要です。
代理店の営業マンはお客様と距離が近くなっているゆえに聞けないパターンもあります。
他にもまだ代理店とお客様で取引が少ないケースでも同様です。
このように代理店営業マンが欲している情報を商談の最中にうまく尋ねること、これが代理店営業の商談に必要なスキルです。
他の例を挙げると、弊社のようにソフトウェアの商談をしている時には
「弊社のソフトウェアをご利用いただく際にオススメのサーバーはこちらです」と代理店が取り扱っているサーバーを薦めるなどして、代理店の販売単価UPをサポートするようにします。
感度が普通の営業マンだと、見積とか金額の話って代理店の営業マンがお客さんと済ませるものでしょ?と思ってしまいます。
代理店の商材を絡めた提案を行うことで、代理店営業マンからは
「製品が決まっても決まらなくてもメーカーの●●さんを顧客に紹介すれば、有益な情報を顧客からゲットできる」
と認知してもらうことが重要なのです。
商談となれば、もちろん代理店営業マンは決めたい(受注したい)ものです。
さもすれば、メーカー営業マンの商品説明方法や事例解説を余すところなく聞いてくれるのです。
よって製品のセールスポイントをもれなくわかりやすく伝えること、そしてたまに代理店営業マンに話を振ります。
「~~でお悩みの企業は結構多いですよね?ねえ、●●さん(代理店営業マン)」
といった具合に話を振ると
「そうですね、私は100社近くお客様を担当しておりますが、~~でお悩みの方は多いです。そこで、先ほどメーカーの方が言っていた~~という面を提案するととても喜ばれます」
このような返しが来るわけです。
話を振ることで、代理店営業マンが事例を述べつつ、自社製品に対して理解を深める一石二鳥の効果があります。
受注が決まったものなら、それ以降の商談では同じように話を振ると
「そうですね、昨年この製品を導入したお客様も同様の課題を抱えられていましたが、~~を改善し、コストが●%削減したと仰っていましたよ」
と商談における超強力なパートナーになるわけです。
このように代理店の営業マンとは、見込客発掘の販路であり、商談ではパートナーでもあります。大切なことは自社のメリットよりも、代理店営業マンのメリットを考え抜くこと。
代理店メリットを考えることを繰り返していけば、自ずと引き合い(リード)は増えていくはずです。
宮本部長、ありがとうございました!