営業マネジメント

働き方改革から考える「営業部門の分業化は不可避!?」

インサイドセールスやカスタマーサクセスといった専門的な営業職種が注目を浴びて久しいです。

なぜ、「営業」とひとくくりではなく、営業の中のそれぞれの専門性が叫ばれるようになってきたのでしょうか!?

今日は中小企業の営業部門内の分業化について考えてみます。

目次

営業分業化の必要性をマクロ的に考える

まずはマクロ的な観点から分業化の必要性を検討してみます。

分業化を求めるマクロ的要素としては

働き方改革の施行
ITインフラとツールの発達

この2つが大きく影響していると私は思ってます。

法という強制ルールによる制約が前者で、一方、テクノロジーの発達という環境改善による追い風が後者です。

制約の中で最大限のパフォーマンスを発揮するためには追い風を有効利用するしかありません。
今日はその方法を私なりに考えてみます。

働き方改革から考える営業コストの削減

まず制約面である働き方改革についての対策を見ていきましょう。

働き方改革について、詳しくはググってほしいのですが、私は端的に
ビジネスパーソン1人あたりの生産性を高めよ
という認識です。

営業部門でいう生産性というのは

超シンプルに書くと、営業の生産性とはこんな感じでしょう。

営業部門における働き方改革では売上は現状をキープしながら、上の式の時間を削減することを要請されていると、個人的には感じています。

では、時間の方を細かく見ていくと、
商談時間、移動時間、資料作成(見積書、提案書、社内報告書、社内向け商談内容共有)、ミーティング(状況報告の会議、売上達成対策、指導・教育関連)、リモートでの顧客対応(メール、電話)、ザックリですが営業活動で時間を投下しているのはこんなところでしょう。

上図の赤文字が顧客対応に費やす時間コストで、青文字が社内向け時間コストなのですが、単純に言うと赤文字部分を出来る限り増やして、青文字をカットすることができれば売上は伸びるはずです。

弊社エクレアラボはSFAメーカーなのですが、実際に多いのはこういったご相談でして
「状況を素早く共有して、営業の社内向けの時間コストを削減したい」
という内容です。
※少し脱線すると、SFAを使うことで素早く現状を共有できるという点では間違いなくお役に立てます。が、商談内容共有に関する営業の時間コストは増える可能性があります。営業を改善するために必要なデータを集めるためには時間的コストは比例して増えてしまうのです。

けれども実際には、社内向けの営業時間を単純にカットしたからと言って売上が上がるわけではありません

仮に何かしらの施策を講じたことで、営業パーソンに時間的余力が出来たとします。
すると、たいていの営業パーソンは
・抱えている案件
・既存顧客など取引先
新たな時間を配分するケースがこれまでは多く見られました。

この場合、
・受注率アップ
・既存取引先からの注文数増加
が望めます。

よって売上アップは望めます。

あれ、売上上がるじゃん。なら社内向けの営業時間をカットすればいいんじゃないの?」と思われるかもしれません。

確かに短期的に見れば、売上は上がるのですが、長期的に売上を上げていくことはこの方法だと望めません。
時間コストの削減だけでは短期的な改善が(もしかしたら)可能になるだけなのです。

持続的な売上アップを実現するために

ではどうすれば長期的、持続的な売上げアップが見込めるかという話に入る前に、売上アップの方程式を見てみましょう。

今回は新規取引先開拓や新規案件の受注に絞ってみました。(既存取引先のシェア・単価アップは含めておりませんので悪しからず)

新規顧客開拓による売上を持続的にアップしていこうと考えた場合、大きくは3点のテコ入れが必要となります。

売上を上げていくということはつまり、
・案件数を増加
・受注率をアップ
・案件単価をアップ
この3つを実現することです。

では上述の3点について、中小企業ではどのように実現していくべきかを考えていきます。
ここに分業化が大きく関連するのです。

営業の分業化は案件数を増加させるためである

案件数を増やすということは
・問い合わせを増やす(インバウンドマーケティング)
・見込客を発掘する(アウトバウンドマーケティング)
という2つを行うしかありません。

ところが上述した通り営業時間コストを捻出したとしても、既存案件や既存顧客の対応に浮いた分の時間を割くことが多く見られます。

よって新規案件数増加のアクションを取るようになることはなかなかありません。
日本市場が右肩上がりの時代は自然と問合せがあったり、既存顧客自身が成長していくにしたがって注文量が増えていました。中小企業にはまだその名残があるので、既存顧客対応を優先的に行います。もっと言えば、新規顧客の開拓に関する知見やノウハウがないことも理由の1つでしょう。

しかし今や国内マーケットは縮小の一途をたどるばかりで、以前のような高度成長は(当分の間は)望めません。

ではどうすればいいのかというと、分業化です。

分業という矯正、いや強制手段により新規開拓(マーケティング)担当者を設けるのです。
営業パーソンの中から新規開拓マーケッターを専任するのです。

そうした場合、当然、その営業パーソンの顧客対応はどうするのか?という問題が発生します。よってまず行うべきはマーケッターに任命する営業パーソンおよび営業全体の顧客対応量の測定です。

無駄や過剰な顧客対応がないかを洗い出すことが最初のアクションです。

とはいえ、おそらく出来る限り無駄を削ったところでも、営業パーソン1人分の顧客対応量を浮かせることは中々難しいはずです。

この時、次に考えるはパートスタッフ、営業事務員の戦力化です。

顧客対応の中で価値が低い=リスクが低く、売上相関度が低いものを営業事務員に割り振ります。

上図の左下箇所に当てはまる業務を
・社内の他の誰か(事務員、他スタッフ)に任せられないか
・ITで自動化や軽減を図れないか
・そもそも無くせないか
を検討します。

ITの導入や無くすことは障壁が高いケースが多いことから、事務員活用をオススメしています。

当然、業務量が増えることに対しての反発はあることでしょう。
しかし、働き方改革が示しているよう短時間でこれまでの成果、いやこれまで以上の成果を出さねばこれからの時代を生き残ることは難しいのです。

上述した手順で営業パーソン1人分の業務を社内の既存リソース(人員)に分配して、体制を変革することは時代の要請なのです。

新規案件増加のための分業化まとめ

1.営業部門の顧客対応量を測る
2.顧客対応の1つずつに価値付けし、無駄を省く
3.顧客対応のプロセスにおいて営業事務員に担当パートを決める
4.浮いた営業人員からマーケッターを任命する

営業の分業化は受注率と案件単価をアップさせるためである

無駄の洗い出しと省略により、営業パーソンは顧客にとって価値のある営業業務(以下、顧客価値業務)に注力できるようになります。

業務ノウハウは投入時間と比例して蓄積されていきます。

ところが営業の守備範囲が広いと、蓄積できるノウハウが分散され、また体系化する余裕がありません

野球に例えるとわかりやすいと思いますが、
ある選手はショートのみを毎日練習します。
一方、ある選手は日替わりでピッチャー、キャッチャー、センター、サード、ショート、セカンドを守ります。

どちらのほうがショートの守備ノウハウをためることができるかは一目瞭然です。

案件数増加のために行った分業化によって、顧客にとって価値のある、そして自社の受注率と受注単価をアップさせる営業ノウハウがためやすい環境を作れるようになるのです。

ちなみに今回は新規案件の獲得、新規顧客の開拓にフォーカスした話にしていますが、実は既存顧客対応のルート営業でも全く同じ話が言えます。

ルート営業でも無駄を削り、価値ある業務に営業時間コストを集中投下し、ノウハウをためていくということについては同様です。

分業を行うためにIT活用は不可避

営業の分業化のメリットばかりをここまでは書いてきました。
分業化には当然のことながらデメリットというかリスクを孕んでいます。

最大のリスクは・・・

顧客満足度を下げる可能性

です。

分業化することで、顧客情報が分散してしまいます。

たとえば事務員さんがある顧客と受け答えしたことが営業担当者と共有できていなかった場合、「この会社はウチのことを理解してくれていない」と顧客不満足を生む可能性があります。

よってIT活用による顧客情報の社内共有が不可欠となります。
※正しくはテクノロジーの発展によりITツールが充実してきたからこそ、分業化推進の動きがここまで大きくなってきたのだと言えるかもしれません。

SFA(※)やCRMと呼ばれる営業部門用の顧客管理ツールを導入したりして、社内横断的に顧客情報を管理することを分業するならばオススメします。
※ちなみに当社のメイン商材であるEcreaがまさにSFAです。

SFAがあるだけでパソコンやスマホさえあれば、いつでもどこでも顧客との応対履歴を参照することが可能となります。

このように顧客情報を全社共有できる情報網を構築しておけば、分業によるデメリットを回避することが出来ます。

また分業による効果を測定する際にもITを活用すべきでしょう。
SFA/CRMが導入されていれば、アポ率や案件化率、受注率など営業の各工程の成果指標を容易に測ることができるようになります。
もっと言うと、分業前に導入することで営業対応量、営業の総活動量を測ることができるようになります。

このように既存の営業人員(営業リソース)を最大限活用し、分業化を行い、専門性を高め、生産性をアップさせていくことを考えた場合、IT活用は避けて通れない道となります。

少子化に伴う労働力不足の一方、技術革新によってITツールはめざましく発展していて、この2点を考慮すると、営業部門の働き方改革は時代の要請なのです。

ABOUT ME
大川 直哉
株式会社エクレアラボ 営業担当 営業支援システム(SFA)メーカーを2社経て、エクレアラボの創業に参画。10年以上のSFA提案や導入の中で300社以上の営業現場に関与。 得意ジャンルは営業手法やマーケティングの失敗談。 「失敗の仕方をレクチャーしたら、クライアントはその方法だけは絶対にやらないようになるから少しは成功確率が上がる」と考えているから。 小さい頃は父親の経営していた会社に入ろうと考えていたが、自身が大学生の時、親の会社が倒産し、世の中は決してぬるくなく、思い通りにいかないことを痛感。それにもかかわらず未だに甘ったれでボンボン気質が抜けないというのが周囲の評価。 趣味はJリーグ観戦。