営業パーソンは顧客の期待を超えるためにヒアリングを行う
前回、顧客の期待を超える必要性について書きました。
顧客の期待を掴むことができるからこそ、期待を超える提案を行うことができ、さらにその先においてサービスや製品によって顧客感動を創出することが可能となります。
期待を把握するためにはヒアリングが欠かせません。
私の場合、ヒアリングの初期目的を図解するとこんな感じです。
ヒアリングを
顧客の現状と課題を正しく把握すること
と認識されている営業パーソンが(あくまで私の体感ですが)割と多いのかな~なんて思ってます。
現状と課題を尋ねるだけでは尋問になりがちで、顧客も尋ねている営業パーソンも楽しくありません。※なぜ尋問になってしまうかは後述します。
私はヒアリングの目的を
「課題解決により得られる楽しい未来への期待感」を把握すること
と定義しています。
よって、ヒアリングの段階からワクワクというか、未来に対するなにかしらの気づきを顧客に与えることが今の時代の営業パーソンには求められます。
ではどんなヒアリングをすべきか、具体的なヒアリング手法について続いて書いていきます。
ヒアリングのための準備事項
初めての面談、いわゆる初回訪問時が最もヒアリングをすることが多いのではないでしょうか。
初回訪問前には、面談企業および面談者についてWEBで調べられる限りの情報を調べておきましょう。
私の場合はwebサイト、facebook・twitterなどSNS、面談者のSNS、競合企業のwebサイトと動向、上場企業であればIRに目を通します。※個人向け営業の場合はSNSくらいでしょうか。
情報を集める目的はただ1つ。
顧客が抱えているであろう課題に対して仮説を立てること
です。
ここでのポイントは「仮説とは何なのか!?」です。
私は吸収の悪い営業パーソンだったので、仮説を立てる理由への理解、そして組み立て精度の向上にとにかく苦しみました。
営業職に就いて10年経った今のところ行き着いた仮説に対する結論としては・・
面談者および面談企業が抱えている(であろう)課題の想定
です。
まず面談企業の外部環境を調べ、取り組みなどの内部環境から会社として抱えているであろう課題を想定します。
次に面談者の部署や役職から彼・彼女たちが抱えているであろう悩みやお困りごとを想定します。
これが仮説なのです。
この課題に対して「こういう解決策を提示したら琴線に触れるかもしれない」という解決策案まで用意したらより良い仮説といえます。
ただし、解決策までを想定しておいてしまうと、当日の商談において自分の仮説に誘導してしまうというケースが有り得るので、個人的には解決策は仮説から省いてます。
仮説のイメージ図はこんな感じです。
まずここまでがヒアリング準備の第一段階です。
まとめると、面談者の望む・目指している姿とそれに達するための壁・課題を想定することが第一段階です。
ヒアリングの心得(SPIN話法)
ここで、少し話は逸れますが初回訪問・初回面談におけるヒアリングについて。
初回訪問時のヒアリングとはいわば仮説のすり合わせ、答え合わせの場です。仮説を事実や顧客の要望と突き合わせて、期待を把握した上で正しい解決策を導くための場です。
話を戻しましょう。
次にすべきは具体的に何をどの順番で尋ねるかです。
上の仮説をそのまま面談者に尋ねると尋問やマウンティングヒアリングになりかねません。
例を書いてみると・・・・
「今、御社はこんな状況ですか?」
「●●が出来ていないということでよろしいでしょうか?」
「○○も出来ていないということでよろしいでしょうか?」
「他に課題はありますか?」
「■■という状況(目指している姿)をお望みということですか?」
これでは気分よくお客さんも答えられません。
仮説をすり合わせるためにはヒアリングスキルを磨かなければなりません。
ヒアリングで有名な手法の1つにSPINがあります。
状況質問(Situation)
問題質問(Problem)
示唆質問(Implication)
解決質問(Need payoff)
のそれぞれ頭文字をとってSPINと言います。
SPINについて詳しくは
これらの著書をご覧ください。(どちらか1冊を読めば十分です)
このSPINの質問テクニックを抑えていれば、上の例のような質問攻めをするようなことはないはずです。
上の例は全て状況質問であり、状況質問というのは今の状況および顕在化している課題の確認作業であることから面談者にとって新しい発見がありません。
面談者の困っていることを何度も状況質問したりしたら、イラッとさせることもありえるでしょう。
私の方法としては
1.1~2つの状況質問で仮説の中の課題にアタリをつける
2.問題質問により課題である確証を得る
3.示唆質問で課題の優先度をチェックする
4.1~3を数回繰り返す
5.ここまでの中で最優先と思われる課題に対して解決質問を実施する
6.解決した未来に対して、「さらにどうなっていきたいのか」「もっと言えば、更にどうなると最高!?」といった具合に未来示唆質問をぶつける
このような手順でヒアリングを重ねます。
仮説が当たっていれば2あたりから「そうなんだよ!それが問題なんだよね・・・」と共感を得ることができ、前のめりな回答が得られるはずです。
そのために1~3でどんな質問をするかを準備しておきます。
これこそがヒアリングのコツです。
ヒアリングのコツまとめ
冒頭の繰り返しになりますが、ヒアリングとは現状と課題を正しく把握することだけでなく
現状と課題を正しく把握し、課題を克服した暁には顧客が想像している以上に明るい未来が待っていることを共有すること
これこそがヒアリングの目指すべき姿です。
現状だけでなく、明るい未来を作るための質問を重ねていくことで、顧客自身がその未来を具体的にイメージできたのであれば、それは営業パーソンと顧客の2人だけが描いた新たな目標像です。
新たな目標像の形成はチャットボットなどwebには出来ません。
The・営業パーソンの価値と言えるでしょう。
新たな目標像を形成できたということは、営業パーソンだけへの期待を形成したということです。
これはつまり新たな期待を創造したということになり、価値判断基準を作ったことを意味します。
こうなると他社はこの商談に簡単に介入してくることは出来なくなります。
営業とは前回書いたように期待を推し量るだけでなく、感動創出のための手段なのです。
感動を作るためにヒアリングを重ね、期待を把握できれば、いつのまにか競合他社は近寄ることができなくなっているはずです。
・ヒアリングとは未来に対する期待感を把握することである
・期待とは現状から目指している姿に慣れた時の明るい未来のことである
・現状確認は最短距離で行う、そのために事前調査はしっかりする
・目指している姿を顧客自身に気づいてもらうためにSPINを用いる
・未来に対してのヒアリングを重視し、自分(営業パーソン)と顧客だけの未来を創造する
・それはつまり新たな期待の創造である
・ヒアリングとは新たな期待を創造し、感動を作るための手段である
長くなりましたが、ヒアリングは現状を確認することでは決してない、というのが今日言いたかったことです^^;
ヒアリングに限らず、どんな商談シチュエーションにおいても顧客・面談者にとってワクワクするスタイルこそ正義です。
自分(営業パーソン)都合ではなく顧客視点のヒアリングを行っていきましょう。